製造業の支出・製造原価からとらえなおす間接材

~あるべき支出管理とコスト削減~

円安による大きな利益変動、世界情勢の不安定さによるサプライチェーンの変動、気候変動に対応するサステナビリティの潮流、といった大きな環境変化を前に、日本企業の経営も今岐路に立っています。日本の製造業も、今まで通りの成長・売上伸長ばかりでなく、人手不足に対応する技術の導入や、今まで着手できなかった領域でのコスト削減の必要性が高まってきている段階にあります。
本記事では、不確実性の高い時代に経営を盤石にしていくための見直しのポイントとしての支出管理の重要性と、製造業ではまだ開拓しきれていない間接材領域の改革の経営におけるインパクトを解説します。

日本の製造業企業を取り巻く環境変化

製造業は、日々変動する業界環境に対応しながら、同時にコストコントロールと業務効率の向上を図らなければなりません。昨今は、あらゆる視点から不確実性の高い状況に日本企業は置かれています。

世界全体の地政学的リスク、特に中東やウクライナでの戦争、米中対立等、世界各地で情勢が悪化することにより、日本企業のサプライチェーンにも多方面から大きな影響が出てきます。情勢変化を受けての原油価格高騰・資材価格の高騰や円安といった経済状況の大きな変化も避けては通れません。Bloombergの2024年5月の調査では、円安により製品売上に恩恵を受けやすい海外比率の高い大企業であっても、資材高騰や相場の変動を見据え、先の見通しに懸念を示していると言及されています(1)。

また、「2025年の崖」「2027年問題」と取り沙汰されるように、人手不足に対応するための生産性の向上や、既存システムの見直しを含むDX面での改革に取り組むニーズも高まっています。

製造現場に従事する人が多く、原価の割合が大きな製造業においては、このような社会の潮流・情勢の変化による影響を受けやすく、それに対応する策が一層必要になってきます。

支出管理の重要性

前段に述べた、変化の激しい状況下で企業が持続可能な経営をしていくために、現在の経営状況をより解像度を上げて把握・管理していくことは重要になってきます。特に、製造業は他業種と比較すると原価率が高くなる傾向にあり、よりコスト削減意識が重要になってくる業種だと言えます。

コスト削減を経営目線で見たときに、原価やそれ以外にかかっているコスト全体を管理することが今改めて重要性を増していると言えるでしょう。欧米ではビジネス支出管理(Business Spend Management)という概念が浸透しており、現在では専用のSaaSツール(BSMツール)を使い、企業内のあらゆる支出をデータ化して管理していく方法が広く用いられています。日本では未だに、支払の詳細は勘定科目ごとの総額のみで管理しており明細が分からない、という状態も存在しますが、それでは「ブラックボックス化」してくる支出が増えてしまいます。

どこにコストがかかっているのかを明確に把握し、その原因を特定し、適切な削減策を打つことが求められます。コストをデータとして管理し、経営にインパクトのある箇所を見極めてコスト削減を続けていくことにより、外部からの影響が大きい環境にあっても、安定した経営を続けていくことができるのです。

支出管理におけるフロンティア:間接材領域の重要性

支出管理に取り組みコスト削減を進めていく、という過程で、特に管理に目を向けるべきは間接費や経費といった「間接材」の領域です。この領域は売上規模に対し、業種ごとの振れ幅はありますが5~25%程度の割合を占める領域と言われています(プロレドパートナーズ(2))。日本企業では、この領域は適切に支出管理できている企業は少なく、多くの場合購買が現場任せで管理が一貫されておらず、どの部署で誰が何を買い、いくら使っているのか、その支出が適切なのか、ということが見直されていないケースもしばしばです。

支出管理と聞いたときに、労務費や、特に製造業では原価に影響の大きい直接材料費(原料費等)については厳しく管理している企業が多いかと思いますが、実は原価に影響する領域である間接費に関しては、現場任せになり見過ごされてきた領域であるとも言えるのです。

間接費は製造原価に関わる重要な領域であり、その他の経費は税法上管理が重要な項目になりますので、その観点でも正しい支出状況の把握と管理が必要な領域であるともいえます。

間接材の支出管理・コスト削減はなぜ未着手のまま残されているのか

こうした間接材の領域が多くの企業において支出管理が進んでおらず、コスト削減に着手しきれていないのにはその資材特性に理由があります。

上記に多く当てはまるような商材、特にいわゆるロングテール品と呼ばれるような資材の場合、購買の実態が見えず、統制が利いていない、という状態に陥りやすくなります。

逆に、現状管理できていないということは、適切な支出管理ができればコスト削減すべき箇所が見えてくるともいえます。先にも述べた通り、間接材全体の占める支出割合は大きく、コスト削減が10%でもできれば、利益率が数%変わるような領域にあります。

ここまで、支出管理の必要性と、間接材領域に取り組む重要性をお伝えしてきましたが、いきなり今までの体制を変えて取り組んでいくことはなかなか難しいものです。次の章では、具体的に取り組めることを紹介します。

間接材の支出管理に取り組む方法

購買データを集約する

今まで管理しきれていなかった間接材領域の支出管理を進めるために、まずは購買データの集約をしていくことから始めましょう。購買状況の可視化・集約化を図ることで、購買の全体像をつかみやすくし、必要データを蓄積・分析することが可能となるのです。

中でも品目の多いロングテール品の購買データの適切な蓄積におすすめなのが、EC購買の活用です。ECの法人契約を活用し、購買システムと連携することで、購入履歴がユーザごと・明細ごとに詳細にたまっていくようになります。もしまだ購買システムを導入していなかったとしても、法人契約が使えるECサイトはありますので、まずはスモールスタートで始めてみるのも一手です(モノタロウでも、導入費0円のONE SOURCE Liteというシステムを提供しています)。EC購買の活用は、データの蓄積のみならず、現場の購買をより効率化することにも大きく寄与できるため、企業の生産性を上げていくことにも貢献できるでしょう。

もし、支出の規模がかなり大きく、全社で支出管理を本格的に進めたい場合、中長期的にはBSM(Business Spend Management)システムの導入をしていくことで、全社の支出管理を最適化していくことができます。現在では外資系のAribaやCoupaなどといったシステムがその代表例です。

間接材の専任担当を設ける

間接材の支出管理をし、データを見て改善をしていきたい、という段階で、間接材調達を管理する専任担当を設けることも検討するとよいでしょう。既に原材料などの見積交渉をメインに進めている調達購買部がある企業が多いと思いますが、間接材の購買は直接材とはまた異なった特徴や管理が必要になってきます。間接材に特化して管理する専任を設けることで、現場任せのバラバラの購買ではなく、あるべき管理を進めることができるようになります。

委託内容を見直す

外部委託している役務などに関しては、その利用状況を把握するとともに、費用対効果を検証していくことも重要です。一度契約してから、内情を見直していないような委託業務もあるのではないでしょうか。もちろん、全てを見直すのには手間もかかるため、段階的に影響の大きいところから見ていくのがおすすめです。

経営層が主体的にかかわる

全社的な支出管理の進行や、現場任せであった間接材の購買改革を進めるには、経営層が主体的にかかわり、全社を巻き込んだ改革として進めていくことも必要です。現場だけでこれまでの購買習慣や申請フローを変えていくのは至難の業ですし、リソースもかかります。改革を進めるためには必要なところにリソースを割いていき、中長期的な方針を立てていくリーダーシップが重要になります。

モノタロウの領域と大企業で利用できるサービス

モノタロウは、間接材の特にロングテール品を専門とするECであり、現場で扱う用具も幅広く取り揃えています。一般的に、間接材のECというと事務消耗品のような販管費に分類される領域を強みとしているサイトも多いですが、モノタロウの場合、製造原価の間接費、特に間接材料費の項目も広くカバーしています。

モノタロウでは、大企業向けに購買を集約する契約プランを設けています。全社でモノタロウを利用した履歴を一括管理することができ、承認フローや請求・支払のカスタマイズもできるようになります。また、今までのモノタロウサイトでの貴社の購買状況データもご希望があれば算出・分析することが可能です。

実際の改革実例

全社改革に取り組まれた積水化学工業株式会社様の実例を紹介したセミナーのダイジェストレポートをぜひご参照ください。BSMを専門とするCoupa社との3社対談となっており、積水化学工業株式会社からはデジタル変革推進部 ビジネスプロセス変革グループ デジタルソリューション推進室長 部長 高原氏に、実際の変革の進め方についてお話をいただいております。

上記リンクはダイジェストとなっておりますが、ページ下部からの登録によって全ページ・全画像が読めるようになりますのでご活用ください。

※本記事は2024年5月時点の情報によりメールマガジンにて執筆・公開したものです。

参考資料:

1)Bloomberg 稲島剛史、古川有希、照喜納明美、小田翔子. “異次元円安「予想超える変化」、輸出企業も戸惑い-業績プラスも”. Bloomberg. 2024-05-02. https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-02/SCQ9U4T1UM0W00. (2024-06-05アクセス)

2)遠藤昌矢. コスト削減の最強戦略 企業競争力を高める間接材コストマネジメント.東洋経済新報社、2023. p13‐14


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