「グリーン調達」を成功させるには?企業価値向上と効率性を両立する実践ガイド

近年、企業の環境配慮への取り組みは、もはや選択肢ではなく必須となっています。国連が「地球沸騰化」という表現で警鐘を鳴らすように、環境問題は遠い未来の課題ではなく、今、企業が直面している現実の経営課題です。
しかし、「具体的に何から手を付けて良いか分からない」といった声も多く聞かれます。
この記事では、なぜ今、企業がグリーン調達に取り組むべきなのか、そしてどのように効率的にグリーン調達を推進し、企業価値向上と効率性を両立できるのかを具体的に解説します。
なぜ今、企業に「グリーン調達」が強く求められるのか?
背景:環境問題の深刻化と企業への高まる要請
日本では上場企業を中心に、温室効果ガスの排出量の開示を求める動きが広がってきており、東京証券取引所のプライム市場上場企業に対し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿ったリスク情報の開示が実質義務化されています。[1]
さらに、2025年3月5日にはサステナビリティ基準委員会(SSBJ)がサステナビリティ情報の開示基準を公表[2]。気候変動は最重要テーマとして位置づけられ、バリューチェーン全体での開示が求められています。これには温室効果ガス(GHG)排出量のScope3開示も含まれ、サプライチェーン全体に影響が及ぶことが予想されます。
「グリーン調達」とは?定義と広がり
グリーン調達とは、環境に配慮された原材料などを企業が調達する取り組みを指します。環境省のグリーン調達ガイドラインによると、「納入先企業が、サプライヤーから環境負荷の少ない製品・サービスや環境配慮等に積極的に取り組んでいる企業から優先的に調達する」ことと定義されています[3]。
このガイドラインでは、製品単体の環境負荷基準で測るのではなく、取引先全体の環境経営を正しく評価し調達を考えることが重要視されています。環境マネジメントシステムや、企業理念、企業方針なども評価の対象となり、製造過程でのCO2の排出状況や、化石燃料の使用、廃棄物の処理方法など業種によって具体的な項目は異なります。
実際の具体的な取り組み例としては、環境負荷の少ない原材料や部品の調達、環境配慮型の製造プロセスを採用した取引先からの調達、環境負荷の少ない梱包資材や輸送サービスの利用などが挙げられます。
グリーン購入との違い
グリーン購入とは、環境に配慮した製品を「消費者」が選んで購入する行為を指します。環境負荷を抑えた原材料や部品を「企業・生産者」が選んで購入するグリーン調達とは、取り組む主体が異なります。
CSR調達・サステナビリティ調達との違い
グリーン調達は、環境負荷の低減に主眼を置いた調達活動です。製品自体の環境負荷、製造プロセスでの環境配慮、サプライヤーの環境マネジメントシステムなどが主な評価項目となります。例えば、環境認証製品の優先購入、CO2排出量の少ない製造工程の評価、省エネ・省資源への取り組みなどが含まれます。
一方、CSR調達は企業の社会的責任全般に焦点を当てた、より広い概念です。環境への配慮(グリーン調達を包含)に加え、人権・労働条件への配慮、法令遵守・企業倫理、地域社会への貢献なども評価の対象となります。児童労働の禁止、適正な労働時間・賃金の確保、地域コミュニティとの共生といった要素が含まれます。
さらに、サステナビリティ調達は、最も包括的な概念として、長期的な持続可能性を追求します。環境面、社会面、経済面、ガバナンス面での持続可能性を総合的に評価します。再生可能エネルギーの活用、サプライチェーン全体でのリスク管理、循環型経済への貢献、長期的な事業継続性などが重要な要素となります。
これら3つの概念の関係性としては、サステナビリティ調達が最も包括的な概念であり、その中にCSR調達が含まれ、さらにその一部としてグリーン調達が位置づけられると理解できます。
近年では、これらの境界は次第にあいまいになりつつあり、多くの企業が統合的なアプローチを採用しています。しかし、グリーン調達は依然として、環境負荷低減という明確な目的を持つ重要な取り組みとして注目されています。特に気候変動対策が世界的な課題となる中、その重要性は一層高まっているといえます。
グリーン調達のメリット
社会や消費者が環境問題に関心を寄せているなか、グリーン調達に取り組むことで以下のようなメリットを得ることができます。
1. 企業のパブリックイメージの向上や、信頼獲得
2. 早期取り組みによる自社のノウハウ蓄積と競合他社に対する優位性の確立
3. 社会・ステークホルダーからの信頼獲得による事業拡大の可能性
特に近年は、「グリーン調達の実施とISO認証の取得を公表する企業と優先的に取引する」という企業も増えています。企業の環境への取り組みは、もはや選択肢ではなく必須となっています。グリーン調達は、その具体的な実践方法の一つとして、今後ますます重要性を増していくでしょう。
間接資材のグリーン調達を「効率的に」進める実践的アプローチ
グリーン調達を効率的に進めるためには、闇雲に取り組むのではなく、体系的なアプローチが重要です。特に間接資材においては、直接資材と比べて管理が複雑になりがちですが、適切なステップを踏むことで確実に成果を上げることができます。
基本的なステップ:3つのポイント
グリーン調達を確実に進めるために、まず押さえておくべき基本的なアプローチがあります。これらのステップを順番に実行することで、効果的なグリーン調達体制を構築できます。
1. 自社の基準・目標設定とガイドライン策定
グリーン調達を進める上で最も重要なのは、「何を目指すのか」を明確にすることです。曖昧な目標では、取り組みが散漫になり、成果も測定できません。具体的には、環境配慮型商品の購買比率目標を設定することが効果的です。例えば、「2026年までに間接資材の環境配慮型商品比率を40%にする」といった数値目標を掲げることで、全社的な取り組みの方向性が明確になります。
また、重視する環境認証マークの設定も重要な要素です。エコマークやグリーンマークなど、自社の価値観や業界特性に合った認証基準を選択することで、商品選定の指針が明確になります。さらに、サプライヤー選定における環境配慮基準を策定し、対象とする商品カテゴリーの優先順位付けを行うことで、限られたリソースを効率的に活用できます。
2. 環境配慮を進めているサプライヤーとの連携強化
グリーン調達は、サプライヤーとの協働なくしては成功しません。単に環境配慮型商品を購入するだけでなく、サプライヤー自体の環境への取り組み姿勢を評価し、共に成長していく関係性を構築することが重要です。
具体的には、サプライヤーの環境マネジメントシステム(ISO14001等)取得状況を確認し、環境配慮型商品の品揃えや開発状況を把握します。さらに、納品時の梱包材削減や配送効率化への取り組み状況、そしてCO2排出量などのデータ提供や情報開示への協力体制についても評価の対象とすることで、真の意味でのグリーン調達が実現できます。
3. 購買データの活用による進捗把握と継続的な改善
目標達成に向けては、現状把握と継続的なモニタリングが不可欠です。感覚的な評価ではなく、データに基づいた客観的な分析を行うことで、真の成果と課題を明確にできます。環境配慮型商品の購買金額・比率を定期的に把握し、部門別・品目別の購買傾向を分析することで、取り組みの偏りや改善点が見えてきます。
さらに、定期的なレビューと改善施策の立案を行うことで、継続的な向上が可能になります。このような仕組みを構築することで、グリーン調達は一時的な取り組みではなく、企業文化として定着していきます。
モノタロウが提供する具体的なソリューション
理論的なアプローチを理解しても、実際の運用において効率的なツールやシステムがなければ、継続的な取り組みは困難です。モノタロウでは、企業の間接資材におけるグリーン調達を包括的に支援する機能を提供しています。
1. 環境配慮型商品の簡単検索・購入

モノタロウでは、各種環境認証マークに対応した商品を豊富に取り扱っています。これらの商品は、認証マークでの絞り込み検索機能により簡単に見つけることができ、商品詳細ページでは環境配慮情報が明確に表示されます。また、エコ商品ラベルによる視認性向上により、購買担当者が日常的に環境配慮型商品を選択しやすい環境を提供しています(詳細)。
モノタロウのサイトでは、絞り込み機能から認証マークごとに環境配慮型商品を絞り込むことができます。

また、大企業向けサービス(法人契約)においては、環境配慮型商品に「エコ商品」のラベルがつけられており、検索結果一覧からもすぐに判別が可能です。
本機能は、ONE SOURCE Lite/各種購買システムへのパンチアウト連携で使用できます。

2. 購買データの可視化・分析支援
グリーン調達の成果を測定するために、環境配慮型商品の購買履歴を自動集計し、部門別・商品カテゴリー別の購買状況レポートを提供しています。これらのデータは、貴社専属担当より、企業様の個別ニーズに合わせた分析が可能です。
まとめ:グリーン調達成功のために
グリーン調達、特に間接資材における取り組みを成功させるためには、戦略的なアプローチが不可欠です。まず、明確な目標設定と段階的なアプローチにより、無理のない範囲で着実に成果を積み重ねることが重要です。一度に全てを変革しようとするのではなく、優先度の高い領域から順次取り組んでいくことで、組織全体の理解と協力を得やすくなります。
次に、適切なサプライヤーの選定と連携により、単なる商品の購入を超えた価値創造を実現できます。サプライヤーとの長期的なパートナーシップを築くことで、より効果的な環境配慮型商品の開発や、サプライチェーン全体での環境負荷削減が可能になります。
そして、データに基づく進捗管理と継続的な改善により、取り組みの効果を最大化できます。定期的な評価と改善により、グリーン調達は企業の競争力向上にも寄与する重要な経営戦略となります。
最後に、効率的なツール・システムの活用により、これらの取り組みを持続可能な形で運用できます。適切なデジタルツールを活用することで、担当者の業務負荷を軽減しながら、より高度な分析と改善を実現できるでしょう。
企業を取り巻く環境規制や社会的要請は今後さらに厳しくなることが予想されます。早期にグリーン調達に取り組むことで、将来的な規制対応の負担軽減だけでなく、競合他社に対する優位性確立、ステークホルダーからの信頼獲得による事業拡大など、多面的なメリットを享受できるでしょう。
<参考情報>
[1]気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)|環境省 https://www.env.go.jp/policy/tcfd.html
【2023年】TCFD開示実質義務化 時系列で解説!|一般社団法人環境エネルギー事業協会https://ene.or.jp/uncategorized/tfcd-time-series/
[2]サステナビリティ開示基準|サステナビリティ基準委員会(SSBJ)https://www.ssb-j.jp/jp/ssbj_standards.html
国際的な基準に準拠した日本版サステナビリティ基準が公開|一般社団法人脱炭素経営支援協会 https://aadm.or.jp/news/359/
[3]グリーン調達推進ガイドライン(暫定版)|環境省https://www.env.go.jp/policy/env-disc/com/com_pr-rep/rep-ref06.pdf
こちらの記事もご覧ください
ご不明な点はお気軽にお問い合わせください



