Web-EDIとEC型購買システムの違いと使い分けを解説

はじめに:調達EDIの現状と2024年問題

調達EDIを取り巻く環境変化

企業間の商取引において、受発注データや請求書などをデジタルで交換する「EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)」は、業務効率化の重要なインフラとして発展してきました。EDIとは、異なる企業間でデータを標準化された形式で電子的にやり取りする仕組みであり、従来の紙や電話、FAXによる取引を自動化することで、人的ミスの削減やリードタイムの短縮、コスト削減などを実現します。

特に製造業や小売業では、取引先との受発注業務を効率化するために不可欠なツールとなっています。従来は専用回線を用いたEDIが主流でしたが、近年はインターネットを活用した「Web-EDI」への移行が進んでいます。さらに、間接材調達の効率化を目的とした「EC型購買システム」という選択肢も注目を集めており、企業の調達システムは大きな転換期を迎えています。

EDI2024年問題とは何か

2024年に「EDI2024年問題」、つまりNTTが長年提供してきたISDN回線サービスの終了により、この回線を使用していた従来のEDI(電子データ交換)が影響を受ける事象が発生しました。

現在、NTTは暫定的な補完策を提供していますが、その提供は2028年末に終了予定であり、処理遅延が発生するなど実用面での課題があります。これは古い通信システムが緊急措置で延命されているような状態です。

この状況は多くの企業にとって、調達システム全体を見直す機会となっています。補完策に頼っている企業も、今後2年以内にインターネットベースの新しいシステムへの完全移行が必要です。Web-EDIやEC型購買システムなど、より効率的で柔軟な選択肢への移行が急速に進んでいます。

直接材と間接材:調達プロセスの違いと課題

調達品目は大きく直接材と間接材に分けられます。直接材は製品製造に直接関わる原材料や部品であり、計画的調達が可能で特定サプライヤーとの継続的取引が中心です。一方、間接材はオフィス用品や工具、MRO(Maintenance, Repair, Operations)品など製造に直接関わらない資材であり、種類が多様で発注頻度や金額にばらつきがあります。

多くの企業では直接材のEDI化は進んでいますが、間接材調達は部門ごとに異なる方法で行われていることが多く、全社的な視点でのデータ集約やガバナンスが課題となっています。調達システムを選択する際には、こうした直接材と間接材の特性の違いを十分に考慮する必要があります。

調達におけるWeb-EDIの位置づけとメリット・課題

Web-EDI導入のメリット

Web-EDIはインターネットとWebブラウザを利用してEDI機能を実現するシステムです。従来型EDIと比較して、専用線や専用端末が不要なため導入・運用コストを大幅に削減できます。また、取引先もWebブラウザさえあれば利用できるため連携のハードルが下がり、クラウド型であれば場所を選ばず利用できる柔軟性も魅力です。

製造業の調達現場では、Web-EDI導入によりペーパーレス化によって発注業務の工数を削減し、多額のコスト削減を実現している事例が少なくありません。また、データ入力ミスによる納期遅延も大幅に減少し、業務品質の向上にも貢献しています。

Web-EDIの課題と限界

しかし、Web-EDIにも課題があります。多くの場合、発注側企業のシステムに合わせる形となるため、取引先は取引先ごとに異なるシステムへの対応が必要になります。

さらに重要な課題として、EDIのデータはフリーテキストで記載されることが多いため、品目名や仕様などの情報が不揃いになりがちで、データの分析や集計が困難になります。例えば同じボールペンでも「ボールペン(黒)」「黒ボールペン」「BP黒」など、表記が統一されていないケースが頻繁に発生します。

また、Web-EDIは取引先ごとに仕様が異なる場合があり、データの標準化がされていないためデータ連携が煩雑になりがちです。一方、EC型購買システムであれば、商品データが統一された形式で管理されているため、品目数が多い間接材の領域でも、データの整合性に関する手間(品目の追加や変更、価格更新などのメンテナンス)をほとんど必要としません。

このような特性上、Web-DEIだけでは間接材購買データを集約し全社視点で分析をすることが難しい場合が多く、組織構造や調達プロセスに応じた細かな承認フローの設定が難しいという課題があるため、間接材調達においては十分に対応できないケースが多く見られるのが現状です。

間接材調達のためのEC型購買システム

EC型購買システムの基本概念

EC型購買システムは、一般消費者向けECサイトの使いやすさと、企業の購買管理に必要な機能を組み合わせたシステムです。

Web-EDIが「取引先との効率的なデータ交換」を主眼としているのに対し、EC型購買システムは「社内の調達プロセス最適化と多様な商品の一元管理」に重点を置いています。調達担当者だけでなく、実際に物品を使用する現場担当者が直感的に操作できるインターフェースが特徴です。

多くのEC型購買システムでは、企業内の購買管理システムと外部ECサイトをシームレスに連携させる「パンチアウト連携」という仕組みも活用されています。これにより、社内の承認ワークフローや予算管理機能はそのままに、外部ECサイトの豊富な商品カタログを活用することができます。

関連記事:パンチアウト連携とは?購買担当者向けに仕組みを解説

EC型購買システムのメリットと適合領域

EC型購買システムの最大のメリットは、社内で膨大な商品マスタを管理する必要がなく、常に最新の商品情報や価格が確認できる点です。外部ECサイトの数十万〜の商品から必要なものを簡単に検索・比較できるため、間接材調達の効率が大幅に向上します。

調達実務において、EC型購買システムの導入により承認プロセスの平均所要時間が3日から1日程度に短縮されるケースが見られます。また、部門別・プロジェクト別の支出分析が可能となり、複数の事業部の間接材調達を一元管理することで年間数千万円のコスト削減を実現している企業も少なくありません。

この仕組みは特に間接材(MRO、事務用品、消耗品など)の調達や、社内承認プロセスの確保と使いやすい商品検索・選定の両立が求められる場面で効果を発揮します。

調達システム選択のための比較:Web-EDIとEC型購買システム

機能面の比較

Web-EDIとEC型購買システムを機能面で比較すると、明確な違いがあります。商品マスタ管理においては、Web-EDIでは取引先ごとに事前登録が必要なのに対し、EC型購買システムでは外部ECサイトのカタログを利用するため管理負担が大幅に軽減されます。また、商品情報の鮮度もEC型購買システムの方が常に最新情報を確認できる点で優れています。

発注プロセスはWeb-EDIが発注専門担当者向けの設計であるのに対し、EC型購買システムは現場担当者も含めた使いやすさを重視しています。承認フローや予算管理については、EC型購買システムの方が詳細なルール設定と柔軟なワークフロー構築が可能です。

Web-EDIは特定取引先との継続的な取引に強みがある一方、EC型購買システムは社内プロセス管理と豊富な商品カタログへのアクセスを両立する点に優位性があります。

機能項目Web-EDIEC型購買システム
商品マスタ管理標準化された仕様はないため、
取引先ごとにフォーマットを合わせる必要
数十万〜数千万点
(サプライヤのカタログ掲載数による)から即時検索可能
発注プロセス発注専門担当者向け現場担当者も含めた使いやすさが特徴
承認フロー基本的な承認機能のみ詳細なルール設定と柔軟なフロー構築が可能
予算管理限定的な機能のみ部門・プロジェクト別の予算管理が可能
分析機能基本的な取引データ管理のみ多角的な調達分析とダッシュボード
導入コスト中〜高(カスタマイズ度合いによる)低〜中(サブスクリプション型)
運用負荷マスタ管理などの定期作業が必要メンテナンスは自動で行われる
サプライヤー連携特定取引先との密な連携に強み多様なサプライヤーからの横断的調達に強み

調達品目特性による適合性

調達品目の特性によって適したシステムは異なります。Web-EDIは繰り返し発注する特定サプライヤーからの直接材調達、仕様が明確で継続的に発注する品目、生産計画と連動した発注が必要な場面に適しています。業界標準のEDIを使った取引が一般的な業界でも有効です。

一方、EC型購買システムは多様な間接材調達、最新の商品情報や価格を常に確認したい場合、社内承認プロセスと商品選定の容易さを両立したい場面に適しています。また、商品マスタのメンテナンス負担を軽減したい場合や、複数のサプライヤーから最適な調達先を選びたい場面でも効果的です。

例えば製造業では、原材料や部品などの直接材調達にはWeb-EDIを、オフィス用品や工具などの間接材調達にはEC型購買システムを活用するという使い分けが効果的です。

直接材と間接材:調達システムの適切な使い分け

調達品目特性による最適なシステム選択

調達システムの選択には、調達金額、発注頻度、品目数、サプライヤー関係という4つの軸での検討が有効です。

高額・計画的な調達はWeb-EDI、少額・随時の調達はEC型購買システムが適しています。定期的な発注はWeb-EDI、不定期・スポット的な発注はEC型購買システムが効率的です。限定的な品目はWeb-EDI、多様な品目はEC型購買システムが管理しやすく、密接な取引関係にあるサプライヤーとはWeb-EDI、多様なサプライヤーからの選択的調達にはEC型購買システムが適しています。

調達実務において効果的な基準としては、取引金額の大きさや頻度に応じたシステム使い分けが挙げられます。

例えば、年間取引額が一定金額を超える主要サプライヤーとの取引にはWeb-EDIを、それ以外の多様な間接材調達にはEC型購買システムを活用するという方法が考えられます。この方法により、直接材の大部分はWeb-EDI、小額・小ロット・低頻度な間接材の大部分はEC型購買システムで管理するという全体最適を実現できるケースが想定できます。

業種や企業規模によっても最適な使い分けは異なりますので、自社の特性に合わせた判断が重要です。

まとめ:効果的な調達システム選択に向けて

調達EDIとEC型購買システム選択の重要ポイント

EDI2024年問題は単なる対応ではなく、調達プロセス全体の見直しの好機です。直接材と間接材では調達特性が異なるため、それぞれに適したシステムを選択することが重要です。Web-EDIとEC型購買システムを併用することで、取引特性に応じた全体最適を実現できます。

また、段階的な導入で確実に効果を実感しながら進めることも成功の鍵です。まずは現状の調達プロセスと課題を可視化し、調達品目の分類と優先順位付け、必要な機能の明確化、そして特定カテゴリ・部門からの試験導入という段階的なアプローチが効果的です。

多くの企業が直面している調達システムの選択と移行の課題は、適切なアプローチによって解決できます。今こそ、将来を見据えた調達システムの最適化に取り組むべき時です。

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